薫風村便り その参

 こんにちは。 村長です。

 

  今日は久々の秋晴れ! やっぱり気持ちよろしいな。

 こんな日は、ほっこりとした店のお話でもひとつ。

 

 おでんのことを関西では「関東煮(かんとだき)」といいます。

      (最近は昭和の言葉になりつつあるようやけど…)

が、唯一「かんさいだき」と称する超有名老舗専門店があります。

 

 その名店は、 『常夜燈(じょうやとう)』

大阪市北区豊崎と言う所に、ほっこりあります。

 

 10月の初旬にたまたま前を通りがかり、丁度開店タイムやったのでそのまま入店。

先客2名と私だけやったので、5人掛けカウンターに案内されました。

 ランチメニューはひとつのみ。10種くらいのかんさいだき種から4つ選択。

所定の用紙に〇をして、カウンター越しにちょっと腰の曲がった親父さんに渡します。

 目の前には長方形のかんさいだき鍋が、ぐつぐつとほんまにええ音出してます。

私は「大根、たまご、がんも、しゅうまい」に〇。

 

「ほな、カウンターさんからいこか。」との親父さんの合図でスタートです。

気づけば、店内はほぼ満席状態に。

 目の前で、親父さんが一つ一つ白い皿に入れてくれます。

店は親父さんともう一人。お弟子さんかご子息か、40前位かな?

 お皿が出るちょっと前に、お茶、茶飯、こぶの佃煮、そしてすましの椀物を出してくれます。

 

 「おまっとうさん。」

 親父さんが、懐かしい響きの大阪弁でカウンター越しに渡してくれます。

 出汁は白濁色。鯛のあらとこぶと白みその出汁やそうです。

 

 両手を合わせて「頂きます。」

するとそれに呼応して親父さんが「よろしおあがり。」

 うわぁぁ、懐かしいこの響き。子供の頃おばあちゃんがよくゆうてくれた、大好きなこの響き!

 関西弁では「おおきに」とこの言葉が、ほんまに好っきやなぁ。

 

 あかん。感動しとる場合やない。食べよ。

 我に返ってやっぱり最初は王道の大根!  丁寧な仕事が嬉しい美味さに感謝!

次はちょっと珍しいしゅうまい。 皮が溶けないタイミングで煮き込まれこれも旨い。

 茶飯と書かれているから、多分お茶で炊いたであろう少し茶色のご飯も、

味噌汁ではなくあっさりすまし汁も嬉しいな。

 

 その時お隣の多分常連さんが、ご飯をおかわり。

 出てきたのは、名物「出汁掛け」

 茶飯に例の白い出汁を直接かけて、薬味とのりを散らしてくれます。

それを見て、速攻でおかわり! 何やこれ!うまっ!

 ふと前を見ると薬味らしきものが竹筒に入って、いかにもかけてくれと言わんばかりに横たわっておるではないか!

 早速出汁掛けに振り掛けると、京都の黒七味という名の脇役がほんまにええ仕事しまんがな! さらに旨味UP!

 ひとり「孤独のグルメ」を演じていると、

 

「あんたらええ日に来ましたな。今日は僕の86歳の誕生日やねん。そやからお代はいりまへん。もし、なんぼかでも思うたら、ここに入れとくんなはれ。」

 

と指した先は、東日本大震災への募金箱。

建築家の安藤さん他、文化人の方々とずっと募金活動をされてるようです。

 

 何やわからんけど、今日は嬉しいな。

食べながら、定価の800円入れて帰ろ、思ったら小銭がなかった。

ほな、千円札折って入れよ。ということで完食。

 その時、最初の募金者が登場。やっぱり千円札。

 

「兄ちゃん。あかんあかん。ほれ、レジ空っぽやねん。お釣りでぇへん。」

という親父さんに千円渡して去る兄ちゃん。

 

 今度は私の番。目の前の募金箱に折った千円札を投入。

「あかんがな。釣りおまへんねん。」という親父さんに、

「ほんまええ日に来させてもらいましたわ。来年の誕生日にまた来ますから、お元気で頑張って下さい。」

 「そうかぁ。おおきに。」

少し困った笑顔の親父さんに、会釈して店を出た私はすっかり役者気分。

 

 自転車にまたがり肩に風を感じた時、あぁそうや。写真撮らな。

 

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  86歳で今も現役。

過去に体調を崩して一時休業したそうやけど、周りからの声もあり再度開店。

今後は動ける限り続けるそうです。

 

 飲食店は定年がないのが魅力やね。

今日は大先輩から元気をもらい、ほんまにええ気分や。

 

 さぁ、新店舗のためのメニュー開発! 市場に行こ!

           

                          ほな、さいなら!